皆様は、ル・コルビュジエという建築家の名前を聞いたことがありますか。建築を学んでいる人なら彼の作品は必ず目にする、モダニズム建築の巨匠です。大学時代、窓の講義で取り上げられた、ル・コルビュジエのロンシャンの礼拝堂に強烈な印象を受けたことを今でも覚えています。メロディが奏でられるようなリズミカルな開口(壁や屋根などに設ける、窓や出入り口のこと)。その開口から差し込む光の神秘性に魅せられて、はるばるフランスまで見に行ったほど。とにかく美しかったです。窓は、室内からはの印象はもちろん、外観のデザインにも非常に影響を及ぼします。
CONTENTS
01| 日本では、窓をつける高さは決まっている?
初めて分譲住宅を設計したとき、ル・コルビュジエのように、いろんな高さに窓をつけようとして、「窓は決まった高さにつけるように」と言われてしまったことがあります。一般的に、日本の住宅は床から約2m~2m20cmくらいに高さをそろえて窓をつけます。窓の大きさも、日本のサッシメーカーの間では、企画サイズは統一されています。
ル・コルビュジエのロンシャン礼拝堂。この写真のようにさまざまな高さで窓をつけることは、現在の日本では難しい
02| 代表的な窓の種類
日々企画化、統一される窓のデザインの中でオリジナリティを出すとしたら、まずは、形と配列でしょうか。
代表的な窓の形には「引き違い」「上げ下げ」「縦滑り出し」「(横)滑り出し」「うち倒し」「FIX(開かない窓)」があります。
最も普及しているのは「引き違い窓」ですが、デザインにこだわる人の多くは掃き出し窓(引き違いよりも開口が床からある、テラスやバルコニーに出るための窓)以外は避ける傾向にあります。
引き違い窓
左右のガラスをスライドして開閉する引き違い窓
掃き出し窓
床に面した掃き出し窓
上げ下げ窓
上下に動かす上げ下げ窓
縦滑り出し窓
左右どちらかに回転する縦滑り出し窓
(横)滑り出し窓
下側が外に開く(横)滑り出し窓
うち倒し窓
室内に倒れるうち倒し窓
FIX(開かない窓)
開閉できないFIX窓
03| 北欧風を目指すなら、上げ下げ窓を
南仏や北欧系のデザインには上げ下げ窓が多用されます。無機質系の住宅にはスリット窓(細い形の窓)が好まれる傾向にあります。これらの窓を横並びに等間隔でいくつか配列すれば、それでもうリズムができあがってデザイン性が生まれます。正方形のFIX窓を縦に並べてもワンポイントデザインになります。
さまざまな窓の建物が並ぶノルウェーの街
スリット窓を使ったスタイリッシュな住宅
04| 開放感たっぷりの大開口
大開口の場合は、各メーカーで大開口サッシを用意していて、折戸のような形状や、壁にスライドするタイプもあります。リビングの掃き出しサッシをこの大開口サッシにすると、窓を開いたときの開放感は広がりますが、金額も高いので予算も上に広がってしまいます。
リフレッシュ効果がありそうな大きな窓
05| 輸入サッシという選択肢も
また、輸入サッシを選ばれる方もいらっしゃいます。枠がアルミや樹脂でなく木枠が使われていたりして、重厚感があり、高いデザイン性も見受けられます。一般的なサッシより高価で納期が必要なものや、準防火地域では防火設備に該当せずに使えないものもあるので注意が必要です。
日本のサッシでもケーシングという部材のついた窓枠に大きめの枠を取り入れることによって、お部屋の中からは輸入サッシに似たようなデザインにすることもできます。
木枠を使用した注文住宅
06| まとめ
このように窓のデザインは奥が深く、最近ではエネルギー性能にも関心が高まり、サッシ枠やガラスの種類によって性能も変わってくるので、考えすぎるとどれがいいか迷ってしまうことも。
まずは、普段通っている街並みの窓や、映画やテレビ、アニメなどに出てくるおうちの窓で、こんなデザイン素敵だなとか思うものがあったら、設計する方に伝えてみてはいかがでしょうか。
窓が並ぶ岐阜県の「水の体験学習館」