── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。
お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第23回は、山形県の南東部に位置する高畠町の「泣いた赤おに」を紹介します。
ライター:吉田友希
CONTENTS
01| ずっと眺めていたい可愛らしさ。色とりどりのデザート
可愛らしいフルーツゼリーは、山形・高畠の「たかはたファーム」が手掛けるデザート。その名もパーティーデザート「泣いた赤おに」です。
真ん中からこっちを見ているのは、近代童話の傑作として有名な「ないた赤おに」に出てくる赤おにです。どこか微笑んでいるような、やさしい顔立ちに癒されます。たくさんのフルーツを使用し、華やかに仕上げられており、特別なシーンで食べたくなるゼリーです。
発売は、2011年11月。たかはたファームの広報ご担当の方に話を伺うと、誕生のきっかけをこんな風に教えてくださいました。
「山形県の高畠町は、有名な童話『ないた赤おに』や『りゅうの目のなみだ』、『むくどりの夢』などを生み出した童話作家・浜田広介先生が幼少期を過ごした地です。
その童話の世界観をゼリーで表現できないかと考え、数々の童話のなかでも、子どもだけでなく大人にまで感動を与える『ないた赤おに』をモチーフにすることにしました。鬼ゼリーの型を特注でつくり、お客様が商品を手に取って笑顔になるような仕上がりを目指しました。
子どものキャラ弁のように、見て楽しく、食べておいしいデザートができたらいいなと考え、山形県産のフルーツを使いながら、試行錯誤してつくりました」。
02| 7種類のフルーツをひとつで味わえる贅沢
幼児ががんばって小脇に抱えるくらい、たっぷりとしたサイズ感
泣いた赤おには、330g。想像よりも、ずっしりしています。「パーティーデザート」とある通り、何人かでシェアして食べるのにちょうどいい大きさです。
お皿に出すと、立体的でより華やかです。
正面から見るとおにの顔がよく見えますが、どの角度から見てもカラフルで美しい佇まい。このカラフルなフルーツたちは、おにの涙を表現しているのだそうです。
画像提供:株式会社たかはたファーム
フルーツは全部で7種類。「ぶどう」「さくらんぼ」「洋梨」「すいか」「マンゴー」「もも(白桃)」「赤えんどう」がひとつのゼリーに入っているというから驚きです! このうち、ぶどう果汁(デラウェア)とさくらんぼは、山形県産のものが使われています。
そして、ゼリーは2層になっています。上のほうのクリアな部分はももゼリー、下のほうの白い部分はももミルクゼリーです。
冷蔵庫で冷やしていただきます。
泣いた赤おには、食べる場所によって違うフルーツを楽しめるのがポイント。数人でワイワイとシェアするのも、一人でご褒美として数回に分けながら食べるのも、どちらもおすすめだそうです。
「泣いた赤おに」以外にも、たくさんのデザートが販売されている。山形県産さくらんぼが贅沢に使われた「さくらんぼゼリー」や、柑橘の爽やかな味わいを楽しめる「オレンジ&グレープフルーツゼリー」など、どれもおいしそう
画像提供:株式会社たかはたファーム
03| あらためて、浜田広介の童話「ないた赤おに」とは?
デザート「泣いた赤おに」と、金の星社の絵本「ないた赤おに」
ないた赤おには、いわゆる恐いおにとは違う、やさしくて素直な赤おにを主人公としたお話です。
自分のことを怖がっている人間と仲よくしたくて悩んでいたときに、青おにがやってきて、悪役を買ってでます。その後、青おにのお陰でたくさんの人間の友達ができ、楽しい日々を送っていました。しかし、青おにのことが気になり訪ねると、そこには貼り紙が残されていて、その内容に赤おにが涙する……という内容です。「トモダチ」からの深い愛情とその背景にある悲しみ、トモダチとの絆について繊細に描かれています。
ないた赤おにの初出は、1933年のこと。以来、たくさんの人に愛されてきました。ないた赤おにの絵本はたくさんありますが、金の星社の絵本は初版発行が2005年5月、2023年12月には第36刷が発行されています。この数字からも、いかに多くの人に読まれてきたかが垣間見えます。
とくに、浜田広介が幼少期を過ごした高畠町の地域の人たちの思い入れはひとしおです。
「高畠町には『浜田広介記念館』があり、ひろすけ童話は地域の人にとって、なじみの深い童話になっています。地元の小学校のなかには、文化祭を『ひろすけ祭』と呼んでいるところがあります。また、山形県高畠町などが主催の『ひろすけ童話賞』では、毎年、優れた幼年童話作品に賞が贈られています。
高畠町のゆるキャラ『たかっき』『はたっき』は、『ないた赤おに』の赤おにと青おにがモチーフになっています」。
04| 浜田広介のルーツであり、稔り豊かな高畠町
自然豊かな高畠町の風景
画像提供:株式会社たかはたファーム
日本のアンデルセンとも呼ばれる童話作家・浜田広介は、ないた赤おにも然り、やさしさや愛情などの善意に満ちた作品、そして郷土性を感じられる作品を多く残したとされています。
「山形県高畠町は、まほろばの里といわれます。『まほろば』とは『まほら』という古語に由来する言葉で、『丘、山に囲まれた稔り豊かな住みよいところ』という意味です。
高畠町は朝晩の寒暖差が大きく、フルーツや野菜、米などの農作物がおいしい、稔り豊かな美しい町です。
たかはたファームは、その恵まれた環境のなかで、地元の食材を利用した特産品の開発にも力を注ぎ、地域の活性化と発展を目指しています。『素材の持ち味を大切に』をコンセプトに、果実や野菜そのものが持つ味や香り、色を生かした製品開発を心がけています」。
おいしいだけでなく、見た目にも楽しめる、泣いた赤おにがまさにそうです。山形・高畠の「泣いた赤おに」、ごちそうさまでした。
株式会社たかはたファーム
所在地:山形県東置賜郡高畠町大字入生田100
TEL:0238-57-4401
営業:8:30~17:30、土日祝休
https://shop.takahata-farm.co.jp/
※「泣いた赤おに」は、高畠町の「浜田広介記念館」や米沢市の「上杉城史苑」をはじめ、全国の取り扱い店で販売中(2024年7月現在)。オンラインショップでも購入可能
この記事を書いた人
吉田友希 ライター