小さな魚に勇気と希望と友情を教えられる『スイミー』に、野ねずみとその仲間たちの物語『フレデリック』などの作品で知られるレオ・レオーニ。2025年7月5日(土)から東京・渋谷のヒカリエホールで開催されている「レオ・レオーニの絵本づくり展」の魅力を紹介します。
編集部:りょう子
01| 3章で構成された展覧会
2024年に板橋区立美術館からスタートした「レオ・レオーニと仲間たち」展の絵本セクションを中心に、映像コンテンツを加えて再構成した本展覧会。構成は3章にわかれています。第1章はコラージュやフロッタージュなど、レオーニの絵本に見られる技法について。第2章は『6わのからす』の原画から読み解くメッセージ、第3章はレオーニの絵本の世界を体感できる映像コンテンツです。
02| レオーニの表現を支える様々な技法(第1章)
第1章では、レオーニのテクニックが紹介されています。レオーニといえば、まず思い浮かべるのがねずみ。『みどりのしっぽのねずみ』と『おんがくねずみジェラルディン』の2作品をのぞき、レオーニの絵本に登場するねずみたちは、すべて紙を使ったコラージュです。そして、胴体部分はハサミを使わず、必ず手でちぎっているそうです。胴体は手でちぎってモフモフ感を、手足やしっぽはハサミで切ることで胴体のモフモフ感を際立たせています。
レオ・レオーニ 《シオドアとものいうきのこ》原画 1971年 Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family
ねずみのパーツが展示されていました!
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
紙を切ったり、貼ったり、組み合わせたりする「コラージュ」や、こすって模様を写し取る「フロッタージュ」、版板に絵を描き、その上から紙を乗せて転写する「モノタイプ」、スタンプを利用する「スタンピング」など、レオーニの絵本に使われている技法をじっくりと見ることができます。あの優しくて可愛い世界はこんな風につくられているんだ……と細部までじっくりと観察したくなります。
スタンピングで葉っぱも表情豊か
レオ・レオーニ 《あいうえおのき》原画 1968年 Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family
さまざまな技法で表現された「葉っぱ」の作品を集めた「葉っぱ採集」のコーナーもありました
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
03| レオーニのメッセージに想いを馳せる(第2章)
第2章では、レオーニの絵本の「ストーリー」に注目。『6わのからす』の原画から、レオーニが伝えたかったメッセージを感じます。
レオ・レオーニ 《6わのからす》原画 1988年 Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
興味深かったのは、レオーニのお孫さんのアニー・レオーニさんの言葉、「すべての絵本の主人公はレオ自身だと思います、絶対に」。画家になる夢をあきらめきれず、50歳を目前にしてアーティストとして、絵本作家として活動を始めたレオーニが生涯を通じて行っていた「自分探し」。また、第2章でみることができる『6わのからす』で語られる「平和」を求める心。展示を見ながら、レオーニが伝えたかったことを考え、レオーニの面影を探す。第2章はそんな風に楽しめます。
04| 絵本の世界を全身で感じる(第3章)
第3章では、インタラクティブ作品を手がけるアートユニットplaplaxによる、レオーニの絵本の世界を体験できる限定コンテンツが展開されています。タイトルは「レオレオリウム!」。レオ・レオーニと、レオーニが子どもの頃につくっていたという「テラリウム」を合体したワードです。
360度の円形スクリーンが印象的な「空想の庭」。スクリーンには4本の作品が流れ、スクリーン内部に入ると自分も絵本の世界に入り込んだような気分に。レオーニのアトリエのあったイタリアのポルチニアーノの風景をベースにしたという、中央に置かれたジオラマも必見です。ジオラマには、スイッチを押すと楽しい仕掛けがあるので、ぜひ押してみて。
おなじみの『スイミー』の世界に没入できる「スイミー・スクロール!」や、『シオドアとものいうきのこ』に登場する青いキノコを立体的に表現した「クィルプ・クィルプ・クィルプ!」など、レオーニの絵本の世界を全身で体感できるコンテンツが。穏やかな音響に包まれながら会場をめぐっているうちに、レオーニのあたたかな世界に浸ることができます。
円形スクリーンの中央に置かれたジオラマ
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
ぐるぐると『スイミー』の世界を歩けます
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
「レオ・レオーニの絵本づくり展」展示風景、ヒカリエホール、2025年
お子さんと一緒でも、大人だけでも満喫できる展覧会です。ぜひこの夏のお出かけプランに加えてください。
05| 展覧会情報はこちら
「レオ・レオーニの絵本づくり展」
開催期間:2025年7月5日(土)〜8月27日(水)
※7月24日(木)は休館。
開催時間:10:00〜19:00(最終入場は18:30まで)
会場:ヒカリエホール
住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ9階
入場料:
【7月鑑賞券】一般 1,800円、高校・大学生 1,200円、小・中学生 900円
【8月鑑賞券】一般 2,400円、高校・大学生 1,700円、小・中学生 1,300円
※未就学児は入場無料
※学生券を購入の場合は、学生証の提示が必須(小学生は除く)
※小学生以下のみの入場は不可。大人(保護者)の同伴が必要
※障がい者手帳の提示で、本人と付き添い1名は半額。当日窓口にて購入してください
※内容は変更となる場合あります
この記事を書いた人
りょう子 編集部