公開日: 2025.08.07 最終更新日: 2025.08.07

【内覧会レポート】「ムーミン」小説80周年。あたたかな気持ちがこみ上げる「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」へ

【内覧会レポート】「ムーミン」小説80周年。あたたかな気持ちがこみ上げる「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」へ

内覧会のこの日は特別に登場したムーミン

「ムーミン」小説の第一作である『小さなトロールと大きな洪水』の出版から80年を迎える2025年。東京・六本木の森アーツセンターギャラリーでは、フィンランドのヘルシンキ市立美術館(HAM)の協力のもと、「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」が開催されています。この展覧会では、トーベ・ヤンソンの初期から1960年代までの油彩画をはじめ、「ムーミン」小説・コミックスの原画やスケッチ、愛用品など約300点を展示。トーベの創造の世界に触れ、「ムーミン」シリーズの魅力をより深く知ることができます。

編集部:りょう子

編集部:りょう子

01| 作者であるトーベ・ヤンソンの創作の世界に触れる

展覧会は二部構成。第一章「トーベ・ヤンソン」では、作者であるトーベ・ヤンソンにスポットが当たります。展示室に入ってすぐの場所には、トーベが描いた肖像画・自画像などが並びます。アーティストの両親のもとで育ったトーベは、子どもの頃から画家になることを夢見ていたそうです。

展示風景 展示風景

15歳の時、フィンランドで刊行された政治風刺雑誌『ガルム』に挿絵を描いたことから、トーベのアーティストとしてのキャリアがスタートしました。以降、『ガルム』が廃刊となる1953年までの間に、約500点の挿絵と、1944年から1953年にかけて100点の表紙イラストを手掛けました。1943年にはムーミントロールの先駆けとなる「スノーク」が登場しています。

展示風景より、雑誌『ガルム』1949年7月号。「GARM」のロゴの近くにスノークの姿が見えます 展示風景より、雑誌『ガルム』1949年7月号。「GARM」のロゴの近くにスノークの姿が見えます

1945年から1970年までに刊行された全9冊の「ムーミン」小説の初版本も展示されています。ストーリーも挿絵もトーベによるものです。

展示風景 展示風景

展示室には、トーベが手掛けた公共施設の壁画の映像なども展示。1955年にアウロラ病院小児病棟の壁画のためのコンペティションに提出したスケッチには、「ムーミン」シリーズのおなじみのキャラクターたちが楽しそうに階段をかけあがる姿が描かれています。これは、幼い患者たちの不安を和らげるためだったようです。

展示風景より、「遊び1~3」 展示風景より、「遊び1~3」

トーベが使っていた絵具などの画材も展示されていました。

展示風景 展示風景

02| 目で、耳で感じる映像体験

展覧会の見どころのひとつは「ムーミン」の世界を体感できる映像体験。保育園のために描かれた壁画「フェアリーテイル・パノラマ」は、2面あわせて幅約7メートルの原寸大。ムーミンたちは、色とりどりのおとぎ話の登場人物たちと行進しています。カラフルな世界を生き物たちが動き、明るく楽しい気分に。

展示風景
トーベ・ヤンソン「フェアリーテイル・パノラマ」(右面)1949年 フィンランド・コトカ市 展示風景
トーベ・ヤンソン「フェアリーテイル・パノラマ」(右面)1949年 フィンランド・コトカ市

第一章と第二章の間には「ムーミン」の小説の挿絵を投影している映像エリアがあり、「ムーミン」小説の印象的な挿絵が、部屋いっぱいに広がっています。こちらの映像は白と黒で構成され、自然の音もあいまって、少しミステリアスな空間になっていました。

展示風景 展示風景

03| ムーミンとおなじみの仲間たちに出会う

第二章では「ムーミン」シリーズに登場するキャラクターたちの貴重な原画やスケッチなど、約230点の作品が展示されています。

展示風景より、リトルミイ 展示風景より、リトルミイ

展示風景より、ロッドユール 展示風景より、ロッドユール

展示室の壁は、黄色、薄紫、緑、濃紺など、とてもカラフル。「ムーミン」シリーズの世界の豊かさをあらわしているかのようです。

展示風景 展示風景

展示風景より、『ムーミン谷の仲間たち』の一場面 展示風景より、『ムーミン谷の仲間たち』の一場面

展示室を進んでいくと、壁にキャラクターたちの言葉が書かれています。例えば、ムーミンママのこんな言葉です。

「もうだいじょうぶよ、ほら、いらっしゃい。ね、なにが起こったって、わたしにはちゃんとあなたがわかるのよ――ムーミンママ」(たのしいムーミン一家)

子どもたちだけでなく、大人の心にも響く言葉たちが、心をじんわりとあたためてくれます。

展示風景 展示風景

展示室の一角にはマンガ版『ムーミン』の原画が展示されるコーナーも。多くの人が立ち止まって、ひとコマずつじっくりと眺めていました。

展示風景 展示風景

展覧会の最後には、キャラクターたちの言葉が書かれた全12種類のカードが置いてあります。お気に入りの言葉を探して、持ち帰ってください。自分で保管して時々見返しても元気になれるし、大切な誰かに渡して気持ちを伝えても素敵です。

「かわいい」という言葉で語られることが多い「ムーミン」シリーズ。展覧会を最後まで見終わると、かわいいだけではなく、作者のトーベ・ヤンソンが「ムーミン」シリーズに込めた、「平和への思い」や「お互いを認め合う心」、「あたたかさ」などを感じることができます。この夏は、ぜひトーベ・ヤンソンが作品に込めた優しい気持ちに触れてください。


※展覧会は北海道立近代美術館(北海道)、長野県立美術館(長野)、松坂屋美術館(愛知)にて巡回予定です。

© Moomin Characters™ © Tove Jansson Estate

04| 展覧会情報はこちら

「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」

開催期間:2025年7月16日(水)~9月17日(水) ※会期中無休
開催時間:10:00~18:00 (金・土・祝前日は10:00~20:00)
※入館は閉館の30分前まで
※土・日・祝日および平日のうち特定日(お盆期間の8月12日〈火〉~15日〈金〉、会期最終週の平日9月16日〈火〉、17日〈水〉)は日時指定予約制
会場:森アーツセンターギャラリー (六本木ヒルズ森タワー52階)
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
観覧料:
【平日】一般/大学・専門学生 2,300円、高校・中学生 1,500円、小学生 800円
※平日特定日は日時指定予約が必要

【土・日・祝日】一般/大学・専門学生 2,500円、高校・中学生 1,600円、小学生 900円
※日時指定予約が必要

※障がい者手帳の提示で、手帳保持者は1名まで観覧料の半額、付き添いの方1名まで無料。チケットカウンター(六本木ヒルズ森タワー3階)にお越しください(当日分のみ)
※未就学児は無料です
※高校生以下は学生証など年齢がわかるもののご提示が必要です
※小学生までのご来場は18歳以上の保護者1名による同伴が必要です。また、保護者1名につき同伴できるお子様は2名までとなります


トーベ・ヤンソン「ムーミンたちとの自画像」1952年 インク、紙
ムーミンキャラクターズコレクション © Moomin Characters™


トーベ・ヤンソン 「ヴィクトリアン・スクラップ」(原画)1970年代初め 鉛筆・水彩、紙
ムーミンキャラクターズコレクション © Moomin Characters™


展覧会キービジュアル

りょう子

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りょう子 編集部

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