── 地域のお菓子をひもとけば、その場所の素敵な側面が見えてくる。
お菓子をとおして街のなかにちょっとだけお邪魔する、「ご当地お菓子」連載。
第27回は、鹿児島県の県庁所在地である鹿児島市の「IMOSUKUI」を紹介します。
ライター:吉田友希
CONTENTS
01| さつまいも本来の味わいを楽しめるスイーツ
「芋をスプーンで。」がコンセプトのこちらのスイーツ、その名も「IMOSUKUI(いもすくい)」。
さつまいもが全国に広まるきっかけとなった場所であり、名産地でもある鹿児島の“新しいお土産”として注目されている、お芋を堪能できるスイーツです。
パッケージのおしゃれさに期待感を高めつつ、箱を開けると、それぞれに冷凍状態のブリュレが入っています。
ブリュレは片手で持てるくらいの可愛らしいサイズ感。ちょっと小腹が空いたときのおやつにちょうどいい大きさです。
02| 食材とバランスにこだわり、約1年かけて開発
画像提供:株式会社MATHERuBA
IMOSUKUIの発売は、2021年9月。「鹿児島にはこんなにおいしいお菓子があるんだよ」と、つい自慢したくなるお土産を目指し、約1年かけて開発されました。
開発を担当された「MATHERuBA Cafe(マザルバカフェ)」のご担当者に裏話を伺うと、こんなふうに教えてくださいました。
「味そのものを支える土台となる食材には、とことんこだわりました。甘さが凝縮されたさつまいも、鮮度が命の卵や純正クリーム、牛乳、それから鹿児島県奄美群島にある喜界島のきび砂糖など、鹿児島県産の食材をふんだんに使用しています。バニラビーンズはオーガニックのものを使用し、食材のすべてにこだわっています。
しかし、開発を進めるなかで、食材を厳選したとしても、“質の高い食材を使用すれば必ずおいしいものができる”というわけではないことに、改めて気づかされました。
それぞれの食材のよさをしっかりと表現するには、配合のバランスが重要です。何度も試行錯誤を重ね、たくさん失敗しながら、ようやく納得のいく味に仕上がりました」。
キャラメリゼの工程も、もちろん手作業
画像提供:株式会社MATHERuBA
食材選びや調達はもちろん、材料の混ぜ合わせや型への流し込み、箱詰めもすべて手作業。真心込めて丁寧に行われています。
03| フレーバーは「安納芋」「紅はるか」「紫いも」の3種類
左から「紅はるか」「安納芋」「紫いも」
画像提供:株式会社MATHERuBA
IMOSUKUIのフレーバーは、全部で3種類。さつまいもの品種の名前をそのままに、「安納芋」「紅はるか」「紫いも」の名称で展開されています。
「さつまいもの品種はたくさんあります。商品をつくる段階で、それぞれの味わいの違いを大切にしたいと考えていました。そのため、品種ごとに合う食材の組み合わせを試行錯誤し、それぞれのおいしさを味わっていただけるようなスイーツに仕上げました」。
以下で、フレーバーごとの特徴をご紹介します。
- 安納芋
種子島で誕生した「安納芋」。品質を守る為に、数年前まで栽培地が島内のみに制限されてきた。生産者の方々に大切に守られてきたおいしさをストレートに伝えるため、何も加えずにシンプルに仕上げられている。 - 紅はるか
美しい紅色の外観と、はるかに甘い味わいから「紅はるか」と名づけられた。ビターなチョコと合わせることで、しっとりとした上品な甘さが鮮明に表現されている。 - 紫いも
落ち着いた甘さと、アントシアニン由来のベリー系の風味が特徴の「紫いも」。ユニークな味わいのお芋には、クリームチーズを合わせてコクと酸味をプラス。自然と表情がほころんでしまうような味わいに仕上げられている。
秋になると、全国的に“さつまいもスイーツ”を目にする機会が増えますが、品種を意識せずに“さつまいも”として一括りにされていることが多い印象です。そんななか、IMOSUKUIは、品種それぞれの風味を生かし、異なる味わいに仕上げられています。さつまいも生産者の方への敬意を感じるスイーツです。
IMOSUKUIの魅力は、食材そのもののおいしさを堪能できること。そして、もうひとつ、食感の変化を楽しめることです。
解凍の具合によって、食感や風味が変化します。食べはじめはアイスのようにひんやり。次第にしっとり、ねっとりとお芋感が増し、風味もしっかりと感じられるように。少しずつ、ゆっくり食べるのがおすすめなんだそうです。
IMOSUKUIは、大袈裟でなく、焼き芋を食べているような本格的な味わい。そして、キャラメリゼのパリパリっとした甘さがアクセントになり、幸せな気持ちになれる“口福スイーツ”です。
04| IMOSUKUIが生まれた場所、「MATHERuBA(交ざる場)」
MATHERuBA Cafeの店内
画像提供:株式会社MATHERuBA
IMOSUKUIを手掛けるMATHERuBA Cafeは、「MATHERuBA(交ざる場)」を構成するカフェです。
MATHERuBAは、鹿児島のひと・もの・ことなどのあらゆるものがつながる場所。鹿児島のシンボルである桜島をのぞむ丘の上にあり、鹿児島の食材を使ったメニューを提供しているMATHERuBA Cafeや、鹿児島の伝統工芸品などを扱うMATHERuBA giftが併設しています。
「MATHERuBAでは、“本当にいいもの”や“つくり手さん”との交流を通して、人とひとをつなぎ、自然のなかで暮らしを大切に彩る時間を提供しています」。
丘の上にあるMATHERuBA Cafe
画像提供:株式会社MATHERuBA
そして、「地域に根差した場所を運営しているMATHERuBAにとって、鹿児島とは?」の問いには、こんなふうに答えてくださいました。
「鹿児島は、たくさんのおいしいものであふれる街。伝統を受け継ぎ、新しいものにチャレンジする街でもあります。そんなたくさんのものを生み出す母なる大地にMATHERuBAはあります。これからも、恵まれた土地でつくり出される食や物を人々へ伝える場であり続けたいと思っております」。
鹿児島の「IMOSUKUI」、ごちそうさまでした。
画像提供:株式会社MATHERuBA
MATHERuBA Cafe
所在地:鹿児島県鹿児島市春山町1509-10
TEL:070-1543-7018
営業時間:11:00~18:00(LO17:00)、火曜日休
https://matheruba.com/
※オンラインショップでも購入可能
この記事を書いた人
吉田友希 ライター