公開日: 2022.08.23 最終更新日: 2023.10.26

ちいさな水辺を演出できる「アクアリウム」って? テラリウムやパルダリウムとの違いも解説

ちいさな水辺を演出できる「アクアリウム」って? テラリウムやパルダリウムとの違いも解説

photo:Daisuke Yamada

家のなかでささやかな水辺を演出できるアイテムとして人気のアクアリウム。また、気軽にグリーンを感じられるとして、近頃人気が高まっているのがテラリウムです。でも、それぞれどんなものを指すのか具体的にわかっている人は少ないのでは。今回は、アクアリウム、テラリウムに加え、区別がつきにくいパルダリウム、ビバリウムについて、それぞれどんなものかを紹介していきます。

編集部:りょう子

編集部:りょう子

01| アクアリウムやテラリウム、パルダリウムの違いを解説。最後の「リウム」に注目を

アクアリウム、テラリウム、コケリウム、パルダリウム、ビバリウム。書き出してみると、それぞれの言葉の最後が「リウム(アリウム)」(-arium)となっていることに気づきます。アリウムとは、ラテン語で「~に関する物・場所・施設」という意味。それぞれの言葉を分解すると下記のようになります。

  • アクアリウム:aqua(水)+arium
  • テラリウム:terra(大地・陸地)+arium
  • パルダリウム:palus(湿地・沼地)+arium
  • ビバリウム:viva(生命)+arium

ごく簡単にまとめるとこのようになります。

  • アクアリウム:水中の生物を水槽で育てる設備
  • テラリウム:陸上の生物をガラス容器などで育てること
  • パルダリウム:水陸両方の生物を育てる設備。特に熱帯雨林環境をパルダリウムと呼ぶことも
  • ビバリウム:生き物全体の生育環境を再現した設備
  • コケリウム(コケテラリウム):コケで構成したテラリウムのこと

02| 水景を再現したアクアリウム

アクアリウムはaqua(水)+ariumと書くように、水のなかで生きる生物を、水槽などで人工的に飼育すること。熱帯魚やメダカ、エビ、サンゴなどはもちろん、水草のみを入れた水槽もアクアリウムと呼びます。水槽の大きさはさまざま。小さなボトルから、120cm以上もある大型の水槽などを使い、水景ができあがります。

<アクアリウムの種類>

アクアリウムを大別すると「海水のアクアリウム」「淡水のアクアリウム」の2つになります。

・海水のアクアリウム
海で暮らす生体を中心としたアクアリウム。カクレクマノミなどの熱帯魚や海水魚のチンアナゴ、エビやサンゴなどを入れます。塩分の調整が必須のため、淡水に比べると少しハードルが高いですが、パッと華やかな水槽なので、取り入れれば部屋のイメージをガラリと変えることができます。

photo:Hirotomo Onodera
海水のアクアリウム。アニメで人気のキャラクターのモデルにもなっているカクレクマノミは子どもにも大人気
※画像はマドリームvol.45「プロに聞く 憧れのアクアリウムの取り入れ方&トレンド」より photo:Hirotomo Onodera
海水のアクアリウム。アニメで人気のキャラクターのモデルにもなっているカクレクマノミは子どもにも大人気
※画像はマドリームvol.45「プロに聞く 憧れのアクアリウムの取り入れ方&トレンド」より

・淡水のアクアリウム
海水よりも比較的管理しやすい淡水のアクアリウム。入れるのはテレワークが始まって以来、人気が高まっているメダカなどの淡水魚、グッピーやネオンテトラなどの淡水の熱帯魚、金魚、メダカ、エビ、水草などです。なかでも、生体を入れない水草のみのアクアリウムの人気が高まっていて、水槽はもちろん、ガラスの瓶などを利用して作ります。

photo:Hirotomo Onodera
葉っぱが水槽の上に突き出し、ダイナミックなレイアウトが魅力の淡水のアクアリウム
※画像はマドリームvol.45「プロに聞く憧れのアクアリウムの取り入れ方&トレンド」より photo:Hirotomo Onodera
葉っぱが水槽の上に突き出し、ダイナミックなレイアウトが魅力の淡水のアクアリウム
※画像はマドリームvol.45「プロに聞く憧れのアクアリウムの取り入れ方&トレンド」より

アクアリウムがあるお部屋実例

プロに聞く! アクアリウムの取り入れ方&トレンド

・超小型のボトルアクアリウム
30cm以下の水槽やガラス瓶などを使ったアクアリウム。100円ショップなどで購入可能なガラスのボトルでも作れる気軽さが魅力です。フィルターやヒーターなどの機材を付けないので、インテリアに馴染みやすいのもポイント。容量が小さいため、こまめな水替えや水草のトリミングも必要です。生体はメダカやアカヒレ、グッピーなどを入れることもあります。

小さなボトル内に流木や水草を配置したボトルアクアリウム
aquarium:Syuichirou Suzuki(SENSUOUS) 小さなボトル内に流木や水草を配置したボトルアクアリウム
aquarium:Syuichirou Suzuki(SENSUOUS)

松本若菜さんの
アクアリウムづくりはこちら

03| 19世紀のヨーロッパで生まれたテラリウム

テラリウムは気密性が高い透明なガラスやプラスチックの容器のなかに、コケや多肉植物、サボテン、エアプランツなどの植物を入れ、植物の生育環境を再現しているもの。

透明な容器のなかで植物を育てるテラリウム 透明な容器のなかで植物を育てるテラリウム

テラリウムの発祥は19世紀のロンドン。17世紀から20世紀にかけて、ヨーロッパでは未知なる植物を探し出し、持ち帰ることを目的とした「プラントハンター」が活躍し、世界中を旅していました。園芸文化が発展していた日本や中国にもプラントハンターが訪れ、アジサイやキク、クレマチスやツツジなど、現在でも人気の植物を持ち帰り、改良し、新しい品種を生み出していました。

ただ、プラントハンターたちがせっかく見つけた植物も、自国へ持ち帰るまでに困難がありました。しかし、イギリスの医師ナサニエル・バグショー・ウォードによって発明された「ウォードの箱」によって問題が解決します。ある時、ウォードは蛾の蛹を入れて密閉したびんのなかで、シダと草の芽がでていることを発見。密閉した箱のなかで水分を循環させることができれば、植物が成長する環境が作れ、長い航海にも耐えられることがわかったのです。

もともとは植物を長期輸送するための方法として考案された「ウォードの箱」でしたが、徐々にいろんな形が作られ、一般の人々に広まっていき、「テラリウム」として愛されるようになったのです。

photo:Hirotomo Onodera
自然を切り取ったような造形が魅力のテラリウム。水をはって魚を泳がせているものを「アクアテラリウム」とよぶことも。
※画像はマドリームvol.45「プロに聞く憧れのアクアリウムの取り入れ方&トレンド」より photo:Hirotomo Onodera
自然を切り取ったような造形が魅力のテラリウム。水をはって魚を泳がせているものを「アクアテラリウム」とよぶことも。
※画像はマドリームvol.45「プロに聞く憧れのアクアリウムの取り入れ方&トレンド」より

部屋のなかで気軽に緑が楽しめるとあって、ここ数年はインテリアとしての人気が高まっているテラリウム。寄せ植えをしたり、吊るしてインテリアのアクセントにしたり、小さなフィギュアを一緒に置いたりして多くの人に愛されています。

<テラリウムに使う植物例>

・コケ
日本人になじみがあるコケ。品種は世界で2万種類以上あるといわれ、日本では2000種ほどが確認されています。乾燥に弱いため、密閉タイプのテラリウムと相性がいいです。コケをメインにしたテラリウムは「コケリウム(コケテラリウム)」と呼ばれます。

コケは置くだけで癒しの雰囲気が漂う
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話題のモスライトって?

・多肉植物
雨が少ない場所や岩場などに生息する多肉植物は、少ない雨量でも生き延びられるのが特徴。育成パターンが夏型(夏に育成)、冬型(冬に育成)、春秋型(春と秋に育成)と3つあるので、種類に合わせた環境を作ることが重要。半密閉か蓋を開けたタイプのテラリウムと相性がいい

ぷにぷにとした葉っぱが可愛い多肉植物のテラリウム。たくさんの種類での寄せ植えもおすすめ ぷにぷにとした葉っぱが可愛い多肉植物のテラリウム。たくさんの種類での寄せ植えもおすすめ

・エアプランツ
ブロメリア科チランジア属の植物。風を好み、樹木の表皮や岩に根を着けて生息します。直射日光ではなく、柔らかな光があたるところに置くのが理想。軽量なのでハンギングタイプのテラリウムに向いています

ハンギングタイプの容器に入れて吊るせば、部屋の雰囲気をぐっとお洒落に変えられます ハンギングタイプの容器に入れて吊るせば、部屋の雰囲気をぐっとお洒落に変えられます

04| 熱帯雨林を再現しているパルダリウム

アクアリウムやテラリウムは聞いたことがあっても、パルダリウムは初耳、という方が多いのではないでしょうか。上に書いたように、パルダリウム(paldarium)は、palus(湿地・沼地)とariumを足した言葉。主に、湿度を好み寒さを嫌う熱帯性の植物が使われ、熱帯雨林をコンパクトに再現しています。湿度管理が重要で、毎日1回以上は霧吹きで水をあげる必要があります。外出が多い方などは、自動で霧を発生させて自動で噴霧できるミストシステムの導入の検討が好ましいです。

ワイルドな雰囲気を作り出せるのがパルダリウムの魅力 ワイルドな雰囲気を作り出せるのがパルダリウムの魅力

<パルダリウムに使う植物例>
コケやシダのほかに、パルダリウムによく使われる植物を紹介します。

・ベゴニア
シュウカイドウ属に分類される植物の総称。ピンクのドット模様などエキゾチックな雰囲気が魅力。

・タンクブロメリア
中南米や西インド諸島などの熱帯・亜熱帯地域に分布するタンクブロメリア。葉の構造が筒状になっていて、水を貯められるのが特徴。

・グラウンドブロメリア
一般的な植物のように根から水分や栄養を吸収して育つ。地面に根を張るタイプで、暑さにも寒さにも強い。

・食虫植物
モウセンゴケやウツボカズラなど、人気上昇中の食虫植物もパルダリウムにおすすめ。食虫植物は水分を好むものが多いので、多湿環境のパルダリウムはぴったり。

葉にある粘毛から粘液を分泌して虫を捕獲するモウセンゴケ 葉にある粘毛から粘液を分泌して虫を捕獲するモウセンゴケ

また、高い湿度を好むヤドクガエルやサラマンダーなどの両生類を飼うのもおすすめ。

中米から南米北西部に生息する、カラフルな色が魅力のヤドクガエル 中米から南米北西部に生息する、カラフルな色が魅力のヤドクガエル

05| 生き物全体の環境を再現したビバリウム

今回紹介している「~リウム」のなかで、一番耳慣れないのが、このビバリウムかもしれません。ビバリウムとはviva(生命)+ariumとなり、生き物全体(動物だけでなく植物も含む)の生育環境を再現した設備のことを指します。アクアリウムやテラリウム、パルダリウムなどは、すべてビバリウムのなかのひとつとなります。

06| まとめ

家のなかに癒しの水中空間が作れるアクアリウムをはじめ、気軽にグリーンを取り入れられるインテリアとして人気上昇中のテラリウム、ワイルドな空間作りに役だつパルダリウムなどの違いについて紹介しました。使う容器は100円ショップや園芸店、ホームセンターなどで入手できます。お店を訪れた際は、育てやすい植物や植物と生体との相性についてお店の人に質問してみると、いろいろと教えてくれるはず。

植物も動物も生き物です。始める前はしっかりと管理方法などをリサーチして挑戦してくださいね!

りょう子

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