こんにちは。一級建築士事務所「アトリエdiシノ」の建築家、井岡志野です。今回のお題は「床暖房」。寒い冬でも暖かく過ごすために、床暖房を検討されている方も多いと思います。今回のコラムでは、床暖房の種類やメリットなど、ご紹介します。
CONTENTS
01| 暖かい家にする‟アクティブ”な方法、床暖房
猫も床暖房から離れられない
前回は日当たりについてのお話でした。日当りは明るさだけでなく暖かさにも直結します。窓の位置によって暖かさを取り入れるパッシブな方法もありますが、今回は設備を使うアクティブな方法によって暖かい家にする方法の一つ、床暖房についてクローズアップしてみましょう。
02| 床暖房のメリットは?
床暖房を取り入れた部屋
床暖房にはいくつか種類がありますが、そもそも床暖房をするメリットとは何でしょうか? まずは「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」という健康的に温まるということがあげられます。もちろん、床暖房は床だけが暖かいわけではなく、ゆっくりとに部屋全体が暖かくなり、その温まり方が、ほんわかしていて、心地よいのです。そのほかには、音がしない、風がでないため、ハウスダストをまき散らすことがない、乾燥しにくい、場所をとらない、などのメリットがあります。
床暖房のメリット
- 健康的に温まる
- 音がしない
- 風がないため、ハウスダストが舞い散らない
- 空気が乾燥しにくい
- 場所をとらない
ストーブは暖かいが、ある程度のスペースが必要
03| 床暖房の種類
では、床暖房にはどんな種類があるのでしょうか?
大きくは電気ヒーター式と温水循環式があります。電気ヒーター式には電熱線式、蓄熱式、PTCヒーター式があります。温水循環式は水を温めて放熱する熱源の種類によって分かれていて、電気、ガス、電気とガスの混合、灯油、が主な熱源です。
<床暖房の種類>
- 電気ヒーター式
電熱線式
蓄熱式
PTCヒーター式 - 温水循環式
電気
ガス
電気とガスの混合
灯油
電気ヒーター式。発熱体を組み込んだパネルを床に内蔵、電気を通すと発熱体が熱を発する仕組み
温水循環式。温めた水を床下に循環させる
04| 気になるコストは?
一般的に、イニシャルコスト(初期費用)は電気ヒーター式のほうが安く、ランニングコスト(定期的にかかる費用)は温水式のほうが安いです。
携わってきた注文住宅で、お客様のご要望で床暖房を設置した場合も多くあります。これまでの経験では、温水式床暖房のほうが多い印象です。理由としては、初期費用が高くても、長い時間使うことを想定してランニングコストを抑えられるほうを選んでいるようでした。また、温水循環式を希望するお客様は、広範囲に設置するケースが多かったです。
- 電気ヒーター式
イニシャルコストが安く、ランニングコストが高い - 温水循環式
イニシャルコストは高いが、ランニングコストは安い
05| 分離型か、一体型か
そのほか導入する際の検討項目としては、床暖房が、床の仕上げ材と分離しているか、一体型であるかです。
一体型は床の張替と床暖房がセットとなるので、仕上げ材だけの張替えができません。しかし、一体型は立ち上がりが早く、熱効率がよいです。
分離型は、床暖房の上に仕上げ材が張られるので、張替えられる可能性はあります。ですが、フローリングに多くのボンドを使用している場合は、剥がす際に床暖房を傷つけてしまい、再利用が難しい場合もあります。将来的に間取り変更や仕上げ材を張替えるサイクルが短いご家庭には、床暖房自体が不向きといえます。
06| シミュレートして、数種類を比較検討
床煖房を導入した方の多くの方は、初めから1種類の床暖房に決めているわけではありません。多くの方が、いくつかの床暖房の設置費用と、想定されるランニングコストをシミュレートして比較して決めている場合がほとんど。これから設置を考えている方は、数種類比較検討して判断されることをおすすめいたします。
07| 床暖房にうってつけのお部屋がある?
それぞれのタイプの床暖房を紹介しましたが、床暖房がうってつけのお部屋の形があります。それは吹抜けのあるお部屋。吹き抜けのあるお部屋なら、床暖房のメリットである「頭寒足熱」がより効果的に発揮されるのです。
冒頭で紹介した、窓の位置によって暖かさを取り入れる「パッシブデザイン」は、光の入り方や風の通り道を検討して、ハイテク機械に頼らずに、より省エネルギーへと導くもの。設計士としては設備機器に頼ることなく、より、パッシブな形で省エネルギーに貢献しようと日々考えておりますが、吹き抜けとの相性抜群の床暖房は、体にやさしいアクティブ機器として導入してもいいかなと思ってしまうものであります。
窓を設置した吹き抜け空間