公開日: 2023.03.08 最終更新日: 2023.10.26

コンパクトながらも開放感も感じられる、人気の平屋。そのメリットとデメリットをプロが解説

コンパクトながらも開放感も感じられる、人気の平屋。そのメリットとデメリットをプロが解説

ミース・ファン・デル・ローエの代表作「ファンズワース邸」

最近、平屋に対する憧れを持つ方は、老若男女問わず増えています。
平屋の魅力はたくさんありますが、まずはデメリットや注意点について考えてみましょう。

アトリエdiシノ 一級建築士:井岡志野

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01| まずは、平屋のデメリットを確認

①平屋はお金がかかる

平屋の最大のウィークポイントは、「お金がかかる」ことです。平屋を建てるには、まずある程度広い土地が必要です。土地の取得費もかかりますし、土地が広くなるぶん、固定資産税も高くなるのです。そして、生活空間を全て平屋で賄おうとすると、2階建ての1階部分のときよりも基礎が広くなります。この基礎の部分は建築費が高く、また屋根の面積も増えるので費用がかさみます。これは、2階建てと同じくらいのキャパシティーを同じエリアに平屋で建てた場合です。もう少し小ぶりな、または個室をそれほど必要としない家を、より郊外に建てれば軽減されます。

平屋でイメージするのは、開放的で広々としたリビング。個室も加えると1階部分が2階建てよりも広くなる 平屋でイメージするのは、開放的で広々としたリビング。個室も加えると1階部分が2階建てよりも広くなる

②周辺環境の影響を受けやすい

次に考えるべきは、よくも悪くも周辺の環境の影響を受けやすい点です。周辺に建つのが3階建てや高層マンションでなくても、2階建ての家が3方で隣接した場合、日当たりが望めない可能性が出てきます。仮に、道路面からは日が入るとしても、プライバシー確保のために窓を高めにつける必要があるため、道路面以外からの採光を取り入れられるよう工夫することが必要となるでしょう。

周辺に家がほとんどない場合、スーパーなどの生活施設も遠くなりがちで不便になってしまいます。また、豪雨や河川の氾濫の際に、家のより高い所へ避難することが難しくなります。床下浸水や床上浸水のリスクも高くなりますので、ハザードマップで浸水の危険をチェックし、より高台に建築することが望ましいです。

02| 平屋はメリットもたくさん

これらの点を踏まえても、平屋の魅力は補って余りあるものです。

①巨匠たちも平屋が大好き

「近代建築の三大巨匠」のうち、前回紹介したル・コルビュジエは、両親に平屋の「レマン湖畔の小さな家」を贈っていますし、ミース・ファン・デル・ローエは代表作の一つ「ファンズワース邸」フランク・ロイド・ライトは「ジェイコブス邸」を設計しています。

ル・コルビュジエの「レマン湖畔の小さな家」 ル・コルビュジエの「レマン湖畔の小さな家」

3つの平屋に共通するのは水平ラインの美しさです。そして、その水平ラインが周辺の環境に溶け込んでいるということです。室内は可能な限り扉や仕切りを取り払い、または可動式家具で緩やかに境界を設け、それぞれが連動した空間となっています。

「ファンズワース邸」も水平の美しさが際立つ 「ファンズワース邸」も水平の美しさが際立つ

②家族のコミュニケーションも活発に

この流れるような空間こそが平屋の最大の魅力で、どこにいても家族の気配を感じさせ、コミュニケーション不足の解消にもつながります。1階から2階などの垂直移動がないフラットな空間移動は、生活動線を短くします。上階を気にすることなく天井高を高くすることもでき、コンパクトな動線とは対照的に開放感を味わえます

家族がリラックスして暮らせそうな平屋なら、毎日の暮らしが楽しくなりそう 家族がリラックスして暮らせそうな平屋なら、毎日の暮らしが楽しくなりそう

④地震や台風には強い

そのほかには、2階建てより荷重が少なく、高さも低いので地震や風の影響を受けにくくなることも大きなメリットです。

03| まとめ

ミース・ファン・デル・ローエの「ファンズワース邸」は、川の氾濫に備えた高床式の建築ですが、超絶なまでの細部へのこだわりが建築の重量感を消し去り、宙に浮かんでいるような浮遊感を感じさせる、まさに傑作です。が、こちらは建設費用も飛ぶように跳ね上がったといわれているので、こだわりすぎも要注意ですね。

井岡志野

この記事を書いた人

井岡志野 アトリエdiシノ 一級建築士

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