生活雑貨に加えて子どもの絵本に雑誌や趣味本。クローゼットも既にいっぱいで収納棚を置くスペースもない。こんな時、「壁面空間を有効に活用できればよいのに……」そう考える方も多いはず。今回は壁面空間を有効活用した壁面収納のメリット・デメリットをはじめ、設置するうえでの大切なポイントや活用方法など、事例と共にご紹介していきます。
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01| 壁面収納の種類
壁面収納といっても種類が沢山ありますが、まずは大きく「システム収納」と「造作収納」の2つに分けられます。
システム収納
PanasonicやLIXILといった各建材メーカーが独自開発して製造販売している既製収納家具のこと。キャビネットのサイズや面材の組合わせ方などが豊富で、レイアウトも自由に選べます。使い方に応じて棚板の位置・枚数が調整できたり、好きな部位の扉を自由に選べたりと、カスタマイズしながら自分好みの空間にすることができます。最近では、各メーカーのホームページから実際に商品を選びながらレイアウトしたりカラー確認が行えるシミュレーションアプリが出ているので、手軽に検討できる点が魅力です。
造作収納
家具屋さんや木工屋さんの手で100%手作りされる収納家具のこと。棚板の材料や扉の種類、取手などの仕様を全て選定しながら作り上げていくので、デザイン性や機能性もしっかりとこだわることができます。また、大きさも1ミリ単位で製作が可能なので空間に合わせた形作りが可能で、サイズの心配もありません。
仕様や細かい納まりなど入念な打合せを行いながら製作するため、システム収納などの既製品に比べると完成までの時間が大幅にかかってしまいますが、世界であなただけの一点ものの収納をつくることができます。時間とコストはかかりますが、素材やデザイン性を優先したい方にはおすすめです。
02| 壁面収納のメリット
①お部屋を広く見せることができる
一般的な置き家具の場合、家具スペース分の床面積は狭くなります。壁面収納の場合は床面積が狭くならず、壁付けタイプにすると視覚的に床が広く感じやすくなり、結果的にお部屋を広く見せることができます。置き家具に比べて転倒の危険性も少なく、耐震性が高いのも◎。
②収納力が大きい
壁面収納は、言ってしまえば壁面積と同じだけの収納スペースを確保することができます。床から天井いっぱいまで物を納める事が可能で、その収納力も魅力的。扉を付けることで視覚的にもすっきりとした印象となります。
③デザイン性が高い
キャビネットや扉の素材・カラーを使い分けることでお部屋との統一感を高め、インテリアとしても楽しめます。また、オープン棚との組み合わせでグリーンや小物を配置するだけで、お洒落な空間を演出することもできます。
03| 壁面収納のデメリット
一方で、以下のようなデメリットもあるので注意が必要です。
①ソファなどの家具レイアウトが限られる
収納を設置した面は、使用動作寸法やクリアランス(施工上必要な隙間のこと)の確保が必要であったり、また、壁面に沿うソファやテーブルなどの家具が置けなくなるなど、家具の配置場所が限られてくる点に注意が必要です。
②模様替えの際に移動できない
基本的に壁面に固定しての設置になるため、部屋の模様替えの際、ソファなどは移動できても壁面収納は移動ができません。
「とにかく大きく、端から端まで一面いっぱいに!」と作ってしまうと、使い勝手の悪い収納スペースになり、圧迫感のある空間になってしまいます。ですので、用途や使用量に応じた適切な収納計画をすることが大切です。あくまで収納はサブ。メインはお部屋の使い勝手ということを念頭において検討してください。
③個々に耐震対策を行う必要がある
収納棚は壁に固定するといっても、扉やオープン棚は耐震対策が必要になってきます。扉は耐震用のラッチ金具を取付けるほか、オープン棚の下にはソファや椅子を置かないなどの対策をする必要があります。
04| おさえておくべき3つのポイント
片付けが苦手な人やお部屋をお洒落にしたい方のために、壁面収納を活用するうえで大切な3つのポイントをご紹介します。
①統一感のある配色にする
収納とはいえ家具なので、お部屋の床や壁材とのバランスを考慮しながら配色を検討するとよいでしょう。また既存家具のカラーやテイストと合わせることで、統一感のある空間をつくることができます。
ウォールナット色などの暖色であればシックで重厚感のある空間に、メープル色やホワイト色であれば明るくて広々とした雰囲気をつくることができます。また、扉材だけ色味を替えてアクセントカラーにすればお洒落さがアップし、洗練された空間を演出できます。必ずお部屋全体の雰囲気とのバランスを考えることが大切です。
②扉の有無を使い分ける
頻繁に手に取る書籍など、使用頻度の高いものや子どもの絵本、インテリアグリーンなど視覚的にみせておきたいものは扉をつけず、逆に小物や備品など隠したいものは扉をつけるなど、メリハリをつけることが大切です。のっぺりとした印象が無くなり、奥行き感を出すことにより演出性を高めることができます。
扉の有無でメリハリがうまれる
③用途に応じた収納計画を行う
何をどれくらい収納するかをしっかり計画すること。できれば、どこに何を置きたいかも事前に考えておくと無駄なく使うことができます。例えば、使用頻度の高いものは下段に置き、あまり使わないものは上段に配置する。ほかには、文庫本や雑誌・書籍などを置く箇所は物量に応じて可動棚にしたり、決まったサイズのものしか置かない場合は、そのサイズに合わせた奥行のキャビネットを設置する、などです。
用途に応じて必要なサイズや仕様が変わってくるので、プランニングの基本計画で一番大切なポイントといえます。
※図書や写真集などの本は重量物なので、棚板の厚みを30㎜程度にするなど適切な材料選びも必要になります。推測される重さに応じて必要耐荷重を計算し、構造上も問題ないかしっかりと加味したうえでプランニングを行ってください。
05| 収納事例と費用比較
カウンターのある壁面収納
IKEAの既製収納棚と天然木とを組み合わせた造作収納。ただ収納できるだけでなく、下部にカウンターを置くことで子どもの勉強スペースや書斎にも活用でき、上部は本や小物を収納できるようにした事例です。白とナチュラル木との組み合わせが相性バッチリです。
床から浮かして壁面に余白をつくることで、空間バランスをほどよく調和しています。インテリア性も持たせつつ収納スペースを上手く活用しました。
- 仕様:組み合わせ造作収納
- 費用:約85万
階段のある壁面収納
リビングに設けたストリップ階段側面のデッドスペースを全て利用して、壁面収納をつくった事例になります。間仕切り壁の厚みを少し大きく取ることで壁面いっぱいに本棚収納スペースをつくることが可能です。またデットスペースになりがちな階段下も収納空間とすることでリビングと階段の一体感も演出することができます。デットスペースを有効利用したい方は参考にしてみるとよいかもしれません。
- 仕様:造作収納
- 費用:約55万
狭小スペースを利用した壁面収納
扉や引き出しを閉じた状態
扉や引き出しを開いた状態
こちらは古築の狭小住宅をリノベーションした際に製作した収納事例。面積が狭く、窓があるため使いにくいリビングダイニングの壁面に、テレビ台を兼ねた収納を取付けしました。窓に干渉しないようにサイズはオーダーで製作。使いにくい空間を一新してアレンジした収納プランです。
- 仕様:造作収納
- 費用:約70万
居室空間全体につくった本棚収納
読書が趣味のご夫婦のご要望で設置したフルオーダーの壁面収納事例。沢山ある書籍を十分に収納できるようにと端から端まで収納要素をぎゅっと詰め込みました。ポイントは圧迫感を出さないように余白をつくり、横長の形状にすること、で広さを感じさせる設計にした点です。
側面にも全て収納をあしらって、収納力満点の空間に仕上げました。棚板は全て可動棚にすることで、都度フレキシブルに利用することができます。このお部屋のようにマンションの場合は梁や柱が沢山あるため、現状の形に合わせた造作設置が望ましいです。
- 仕様:造作収納
- 費用:約150万
どシンプルな壁面収納
意匠的に格好よく見せたいとご主人の想いでできあがったどシンプル壁面収納事例。壁面に棚板を取り付けただけのシンプルな空間に。腰壁にはオーシャンブルーのモザイクタイルを貼り付けて、爽やかさを演出しました。棚板はオークの集成材をウレタン塗装で仕上げ、ワイルドな印象に。収納量よりもデザイン重視の方はぜひ検討してみてください。
- 仕様:造作収納
- 費用:約35万
寝室にも調和するシステム収納
本や雑貨・携帯の充電器など、小物を収納できるようにと設置したシステム収納事例。パナソニックの”キュビオス”というシリーズのシステム収納を採用し、コンパクトにまとめることで優しくライトな雰囲気の空間にしました。奥行は28㎝タイプなのでお部屋の床面積もほとんど削ることなく、文庫本や小物を収納する分には充分なサイズです。
既製品ですが、オプションでキャビネットの側板や棚板に配線孔を設定できるため、扉を閉めたまま充電が可能でAV機器や電源用配線も隠すことができます。
また、キャビネットと扉面材の配色を変えることで立体感が得られ、好印象に。
このように既製品でも組み合わせ次第で自分好みの仕様にカスタマイズして楽しむことができます。
- 仕様:システム収納
- 費用:約60万
06| まとめ
お部屋は心の鏡。散らかっている物が綺麗に収納され、空間が整うと心も整います。足の踏み場がなく毎日物で溢れたお家にうんざりしている方、引っ越しや新居を検討中の方もこの機会にぜひ実践してみてください!