vol.1の公園散策編に続き、今回は石神井公園駅周辺の地元の人々に愛されている飲食店や雑貨店を紹介します。どのお店も店主の想いや個性が反映されていて、一度足を運んだらまた訪れたくなる名店ばかりです。
ライター:鈴城久理子
CONTENTS
01| 極上の一杯を愉しむ
サイフォン珈琲 LILY
サイフォンは5人用と3人用があります。煮詰めないように、片ときも目を離さない根本さん
石神井公園には喫茶店やカフェがいくつも点在していますが、なかでも根強いファンを持つ純喫茶といえば、ここ「サイフォン珈琲 LILY」。創業はなんと昭和38年、今年60年を迎える歴史ある名店です。
このお店の人気の秘密は、なんといってもマスターの根本さんが丁寧に淹れてくれるサイフォンコーヒー。下からふつふつと細かな泡が上がってくるのを眺めながら、根本さんやほかのお客さんとおしゃべりを楽しむのは、極上のひとときです。
フラスコにコーヒーが溜まっていく様子を見ていたら、子どもの頃サイフォンコーヒーに憧れたことを思い出しました
「おいしいコーヒーはね、煮詰めないで蒸して淹れること。煮詰めると苦味が出てしまうから」と根本さん。学生時代は新劇を勉強し、大学卒業後に縁あってこのお店のオーナーになったと話してくれます。美味しいコーヒーはもちろんのこと、何気ない根本さんとの会話を楽しみに訪れるお客さんも少なくありません。
自慢のブレンドコーヒー(520円)には、チョコレートが添えられていました。酸味とコクのバランスがよく、私好みの味!
この日いただいたのは、コロンビア、ブラジル、モカ、ガテマラの4種類の豆をブレンドしたこだわりのブレンドコーヒー。ミルクを入れず、ストレートで飲むとコーヒー本来の味がよくわかります。「同じブレンドでも昔と今では少し焙煎の仕方を変えています。最近は少し深めにしているんですよ」
いくつも絵画や植物が飾られ、ライトの柔らかい光がノスタルジーを誘います
店内にはアーチを描いたカウンターのほか、独立したテーブル席があります。おしゃべりを楽しみたいならカウンター席、ゆっくりと自分だけの時間を満喫したいならテーブルの席がおすすめ。
この日の昼定食(950円)は、ブリ照焼。小鉢が4品ついていて、栄養バランスもばっちり!
もうひとつ嬉しいのは、フードメニューも充実していること。特に人気が高いのはお昼の和定食で、ブリ照焼、赤魚、シャケ、塩サバ、サンマの開きという魚がメインのメニュー。小鉢も含めてすべて根本さんの手作りなのだそう。お客さんの様子を見計らって、根本さんもランチタイム。「魚はその日によって違うけれど、ほかに煮物、和え物、酢の物など、似たような料理が重ならないようにしています。家庭料理って感じだね」
入口のショーケースにはサイフォンやコーヒーカップが陳列。お店は石神井公園駅南口から徒歩約5分の場所にあります
学生時代に新劇の勉強で声を鍛えたからなのか、根本さんの声がとても心地よく、何時間でも話を聞いていたい、そんな素敵な時間でした。
サイフォン珈琲 LILY
所在地:東京都練馬区石神井町3-29-5
電話:03-3995-9695
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜・祝日
02| 懐かしいシュークリームに出合う
ベルナールハラ
店内に並ぶ美味しそうなパン。つい目移りしてしまいます
住宅街の一角にひっそりと佇むパン屋さん「ベルナールハラ」。ガラス張りの入口に自転車を止めたお客さんが、絶え間なく入っていきます。ひとしきりお客さんがいなくなったのを見届けて店内に入ると、ショーケースとテーブルに並んだパンにまず目を引かれます。
現在の店主は2代目の原幸雄さん。創業者は父親の喜代次さんで、その後を継いだのだそう。今では家族みんなでお店を切り盛りしています。
甘いパンから総菜パンまで、種類が豊富なのも魅力
クリームパンやこしあんぱんのような定番パンから、「ボロネーゼジャンボフランク」「カルボナーラとポークウィンナー」など、ネーミングからおいしそうな惣菜パンがずらり。一つひとつに細かな説明書きがついていて、総菜パンは天然酵母フランスパン生地を使っているものがほとんどです。
焼き上がったばかりの天然酵母の食パン。手前は天然酵母に17穀米を加えたもの(一斤260円)
ベーカリーの看板商品は原材料にこだわった食パン。イーストは使わずホシノ天然酵母を使っているそう。「イーストだと香りが強くなってしまいますが、天然酵母なら香りや食感がよくなります。17穀米を加えたパンは健康にもいいですし」と原さん。さっそく17穀米入りの食パンを一斤購入し、店頭でスライスをお願いすると、「5枚切りがおすすめですよ」と奥さんが教えてくれました。家に帰って食べてみると、柔らかくて軽く、自然な甘味が口いっぱいに広がります。二斤でもよかったかも? とちょっと後悔……。
残り少なくなってしまったシュークリーム(130円)と昔ながらのカスタードプリン(150円)
この日のもうひとつのお目当ては、シュークリームとカスタードプリン。以前食べて感動した美味しさだったので、今回も二個ずつ購入。驚くのはそのリーズナブルな価格です。素朴な疑問を原さんにぶつけてみると、「うちは洋菓子店じゃなく、ベーカリーだからかもしれませんね」と笑って答えてくれました。
パウダーシュガーがかけられたシューの形が愛らしい
生地はサクサク、クリームはトロッ。ほどよい甘さで何個でも食べられそうなシュークリーム。中はカスタードクリームとホイップクリームのダブルになっていて、子どもの頃に食べた懐かしい味そのままでした。ファンが多いのもうなずけます!
ホイップクリームとチェリーでデコレーション
お次はカスタードプリン。そのままでもおいしいけれど、子どもの頃を思い出してちょっと飾って楽しんでみました。甘さ控えめで優しい味わい。ホイップクリームと一緒に食べてもしつこく感じません。シュークリームと同じく看板商品になっているそう。
先代の似顔絵が描かれた看板が目印。石神井公園駅北口から徒歩約6分
「安全な材料を使って、丁寧に作る」がモットーという原さん。真摯な姿勢がパン作りにも表れていて、それが地元民に愛されるゆえんなのかもしれません。
ベルナールハラ
所在地:東京都練馬区石神井町2-1-11
電話: 03-3996-7243
営業時間:11:00~20:00
定休日:日曜
03| 街の台所のようなお惣菜店
たべものや ITOHEN
コンクリート打ちっ放しの店内と、家庭的なお惣菜メニューという対比もユニーク
「心を込めて、手をかけて作ったお惣菜を提供し、日々の食べることに寄りそうお店でありたい」。髙橋さんがそんな想いでお店をオープンしたのは2013年のこと。魚屋や八百屋が軒を連ねる石神井町二丁目商店街に位置する「たべものや ITOHEN」は、まさに街のお惣菜店といったお店です。
「“ITOHEN”という店名は、漢字の部首の“いとへん”から命名しました。結ぶ、繋ぐ、継ぐなどのように、お店をやるにあたって、ぴったりの漢字が多かったんです」
ショーケースには日替わりで15種類ほどの手作りのお惣菜が並びます
レパートリーが多く、その時々によって異なるお惣菜が並ぶのもこの店の大きな特徴です。「1日に並ぶのは約15種類ですが、メニューは週替わりで変えています。お客様の好みやその日の体調に合わせて選んでいただけるようにと考えています」と髙橋さん。
野菜を使ったお惣菜を求めてやってくるお客さんが多いそう
注文の多いメニューは唐揚げやハンバーグ。でも、お肉をメインに使ったおかずだけでなく、野菜を使ったメニューも人気なのだとか。かぼちゃとなす、ピーマンを使った「彩り野菜のあげびたし」はとても人気で、毎日作っていると言います。
イートインの「組む定食(1,650円)」。4品のお惣菜とごはん、お味噌汁、ドリンク(ドリンクは選べます)がセットになっています
この日いただいたのは、好みのお惣菜4点を選べる「組む定食」。ここにも“いとへん”の漢字が使われていました。そのほか、メイン・副菜・サラダから好みのものを4種類選べるお弁当やお惣菜の量り売りなど、テイクアウトのメニューも充実。また火曜日は「oyatuの日」としてたくさんの焼き菓子も並びます。それを目当てに来店するお客さんもいるほどです。
照明やペーパークラフトのオーナメントなど、インテリアも素敵(左)。本棚にはさまざまな本がぎっしり(右)
料理やスイーツのほかにも、店内のあちこちに見所がたくさん。部屋づくりの参考になりそうなインテリアや自由に手に取れるブックコーナー、またおすすめの調味料や作家もののアクセサリーの販売スペースもありました。
外観もしっとりとした雰囲気。石神井公園駅北口から徒歩約6分
年に一度、5月に石神井氷川神社で行われるイベント“井のいち”にも協力するなど、地元のお店同士の広がりも楽しんでいるそう。詳細は公式HPで紹介しているので、ぜひチェックを。
たべものや ITOHEN
所在地:東京都練馬区石神井町2-13-5
電話:03-5923-9842
営業時間: 11:00~18:30
定休日:日曜・月曜・たまに祝日の臨時休業あり
URL:http://itohen.sub.jp
04| 豊かな暮らしを提案する雑貨店
copse(コプス)
通りに面したテラスが目印。お店の外からも心地よい気配が漂います
“雑木林”という意味を持つ「copse(コプス)」は、まさにこの石神井公園の自然に溶け込んでいるような雑貨店。店主はもう20年以上石神井公園に住んでいるという小森さん。衣食住を通して心地よい暮らしを提案したいと考え、お店をオープンしたと言います。
「石神井公園周辺にはまだ畑が残っていて、即売所で採れたての野菜が手に入るような環境なんです。都市に住みながら自然を身近にした暮らしが叶う、そんな理想的な場所。copseをきっかけに訪れた方に、この土地の魅力を知ってもらえる機会になれば、うれしいですね」と語ってくれました。
衣食住をテーマに、器や洋服、アートなどを幅広く紹介。写真は阿部慎太朗さんとNutelさんの2人展の様子
copseのユニークな点は、企画展を中心に展開していること。常設しているアイテムもありますが、月に一、二度企画展を開催してユニークなものづくりをしている作家さんたちの作品を紹介しています。「セレクトのポイントは、私自身が共感できるものであるのはもちろんのこと、この石神井の暮らしにフィットすることも大切にしています」
器とグリーンを合わせた店内の美しいディスプレイも必見!
扱っているアイテムは、器やガラス、木工、洋服など多岐に渡ります。店内に並ぶアイテム自体の魅力はもちろん、展示ごとに異なるディスプレイも素敵。テーブルコーディネートのヒントがちりばめられています。
グラデーションになるように掛けられたカラフルな春の洋服
このお店ならではの楽しみは、ほかにもたくさんあります。それはワークショップや演奏会、お話会などのイベントが多いこと。それを目当てに足を運ぶお客さんも多いようです。
お店の外にはテラス席があり、ドリンクを提供。大泉学園から徒歩約10分
大泉学園駅から石神井公園に向かう途中のロケーションなので、散歩の行き帰りに遊びに行ってみませんか?
copse(コプス)
所在地:東京都練馬区石神井台3-24-39 ロイヤルコトブキ1F
電話: 03-6913-1544
営業時間:11:30~17:30
定休日:不定休
URL:http://www.copse.biz
05| まとめ
歴史ある老舗から比較的新しいおしゃれなお店まで、さまざまな顔を持つ石神井公園エリア。取材を通してみなさんの地元への想いを垣間見て、また新たな魅力を見つけたような気がします。次回のvol.3では商店街や歴史、お祭りを紹介します。
この記事を書いた人
鈴城久理子 ライター
雑貨紹介や料理、インテリアなど暮らし系の記事を中心に執筆することが多いライター。ただいまメダ活実践中。