こんにちは。一級建築士事務所「アトリエdiシノ」の建築家、井岡志野です。今回のお題は「日当たりがいい部屋にするコツ」。家を建てる時、日当たりのよさを重視する方は多いと思います。日当たりがいいお家にするためのコツや、デメリットをご紹介します。
CONTENTS
01| 光とは、建築家が最も意識し、葛藤するもの
好きな建築は? と聞かれて答えるとき、その建築の形そのものが好きなのか、光の入り方が好きなのかわからなくなることがあります。空間を体感するとき、壁の色柄は当然目に入りますが、光は空間と一体と言っていいほど密接な関係にあります。もちろん光だけでなく風の入り方など重要視することはありますが、光ほど、建築家が意識し、葛藤する要素はないと思います。それゆえに、日当たりのいい家にする明快な方法があるわけではない(と思います)が、これまでの事例とともにちょっとしたコツをご紹介いたします。
02| 理想的な日当たりの土地に見えたけれど……
まずは、光の入り方が予想外だった例をご紹介します。
東南の角地で、南側は幅員(ふくいん)5m以上の道路に面するという、日当たりに関してかなり恵まれた敷地をご購入されたお客様がいらっしゃいました。
当初のプランとしては、敷地の南側は少し空間を設けていました。ですが、南道路の対岸の地盤が高くなっていて、予想以上にお向かいの家の影ができるとわかりました。そのため、予定よりも南側の道路境界から建物を離して配置し、東側からも光を取り入れられるようにリビングを東南にもってきて、玄関を東から南西に変更したのです。
このように、方角的には問題がなくても、周辺環境によって光が遮られることはよくあります。しかし、この家の場合は東南角地で視界がとてもひらけているので、お昼過ぎにいってみないと、意外と日陰になるとは分からなかったかもしれません。
やはり、いろんな天候のいろんな時間で日当たりをチェックすることはとても重要です。午前中は実に日当たりがいいけれど、午後からはほとんど当たらない、または、その逆の場合もあるので、実際に現地に足を運んで体験してみてください。
03| 日当たりがいい家にもデメリットはある
日当たりがいいお家のメリットは沢山ありますが、デメリットもあります。それは、価格が高くなる傾向があるということでしょう。都心はもちろん、都心から離れた場所でも、駅からの利便性やそのほかの条件を兼ね備えたうえ、一日中日が当たる家となるとどうしてもお値段が高くなってしまいます。
04| 必要なのは“自分が望む方角”からの光
丸一日、日が当たる家は価格的に厳しいとなると、大切になってくるのが、どの時間帯のどこからの光が自分に必要なのか、それが満たされそうな方角を想像してみること。東西南北どの向きの敷地が自分に合っているか探るヒントになるでしょう。
日中は仕事で家にいないから、日当たりは重要ではないという方もいるでしょう。そのような理由で、西日しか入らない賃貸住宅に住んでいた方がましたが、西日だけだと気が滅入ってしまうから、朝日が入る家が欲しいといわれたこともありました。なので、夕方から夜にかけて長く家にいたとしても、必ずしも西向きがよいとも限りません。生活スタイルだけでなく、好みもあるので、自分が望む方角からの光を取り入れることを意識してみてください。
生理学的には、朝、光を浴びると体内時計を調整するホルモンが分泌されて生活リズムが整うともいわれて言います。朝が苦手な人ほど、朝日が入る窓を設置し、朝型のリズムを目覚めさせてはいかがでしょうか。
05| 各部屋の場所は「望み」を明確にしながら決定を
さて、土地のおおよその日の入り方をチェックしたら、どの向きにどの部屋をもってくるかを考えることになります。
リビングの場所は、やはり日当たりがよい場所
リビングを日当たりのよいところに持ってくることが多いですが、1階では難しい場合は、2階にリビングをつくったり、吹抜けを設けたりすることもあります。
明るいキッチンを望む方が多い
キッチンとリビングがつながっているので、明るい空間に
今は対面キッチンが主流になっていて、リビングと繋がる明るいキッチンが多いですが、少し前に建った家では、キッチンに日が当たらないことがよくあります。
対面キッチンにリフォームしたいという問い合わせがあって、よくよく伺ってみると対面キッチンというよりはキッチンを明るくしたいということだったりもします。
しかしながら、キッチンは単に明るければいいというものでもありません。直射日光が入りすぎると、ものが痛みやすくなることもあります。暗いところに位置したキッチンに天窓がついていることがありますが、キッチンの天窓をすごく気に入っている方はあまりいらっしゃらなかったです。このように、単に日差しがあればよいのではなく、閉鎖的でない、開放的な空間が求められる部屋もあります。
予想以上の効果が得られる天窓
天窓といえば、階段を上った踊り場に天窓を設置したこともありました。夜空の星を眺められるのは最高だと、それはそれは気に入っていただけました。階段の下の方からから見上げると、天窓がかなり高い位置になるので、より吹き抜けた感じになったのもよかったのでしょう。
階段の踊り場に天窓を設けたお家
吹抜けの空間には高い位置に窓を設置するだけでも、天窓と同じように広がりが生まれて日差しを取り込む以上の効果を発揮するのでおすすめです。
吹抜け空間に窓を設置。空間に広がりがうまれる
吹抜け空間に窓を設置。予想以上に明るくなった
子ども部屋を北側に設置する理由とは
北側の子ども部屋に設置したロフト
子ども部屋に関しては、あまり部屋にこもってほしくないと、あえて北側を希望する方もいます。
その場合、リビングの広さに比べると小さめの部屋だったりします。ですが、多くはロフトを希望されるので、北側の小さめの部屋であっても天井高が高く、遊び場の延長の様な、見ためにも面白い空間になります。南側に比べればもちろん冬は寒くなりがちではありますが、子どもは風の子ということもあり、選択肢の一つではあると思います。
06| まとめ
日当たりについて、過去の例を取り上げつつお話ししました。日当たりについては一概にどれが正解ということもありません。部屋ごとに使われる方の好みや望みに応じて、より理想に近い形を追求して計画していただけたらと思います。