一日頑張った後の癒しの空間、お風呂。もっと素敵でお洒落なお風呂にしたいけど、どうしたらよいの? 色々調べてみても結局分からない……。そうお悩みの方も多いのではないでしょうか。毎日使う場所だからこそ、お掃除のしやすさはもちろん、快適でスタイリッシュなお風呂にしたいですよね。そこで、浴室の種類やおさえておくべき要点などをプロの視点から詳しくご紹介していきます!
CONTENTS
01| 浴室の種類について
在来工法
床も壁も天井もモルタル(砂、セメント、水を練り混ぜてつくる建築材料)でつくられた従来型のお風呂です。
現在ではあまりみかけませんが、オーダーメイドで在来工法のお風呂を選ぶ方もいるほど。その理由は、材料や仕上げ・ディテールに至るまで、とことんこだわる事ができるから。
デメリットとしては費用がかかる点と、メンテナンスがしにくい点です。職人さんが現場ですべて手作業でつくっていくので、材料や手間・工期もかかってしまいます。それらを考慮する必要がありますが、水栓一つから厳選しながらカタチづくりたい方にはおすすめです!
ユニットバス
工場で生産されたパネルや浴槽を現場で組み立ててつくるお風呂です。おそらくほとんどのご家庭で使われているお風呂が、このユニットバスタイプなのではないでしょうか。
在来工法と比べると格段にコストも安く、機能性やメンテナンスのしやすさについても優れています。なにより、圧倒的に工期も早く、最短で3日で解体~設置までが(新築だと1日で)可能です。
戦後に普及した在来工法も昭和後期になるとどんどんその姿も消え、現在主流のユニットバスへと変化していきました。そのきっかけとなったのは、1964年の東京オリンピック。オリンピックのために計画された「ホテルニューオータニ」の建設作業を短くするために、東洋陶器(現TOTO)・日立化成工業(現ハウステック)の2社にて共同開発されたのが発端です。
デメリットとしては、在来工法と比べると素材の種類が狭まるのと、水栓や器具も指定の製品から選んでいく仕様になるので、ある程度の枠組の中でしか決めれないという点です。規格サイズも決まっているので、必然的に浴室サイズもその範囲からでしか選ぶことができません。
ただし、浴室サイズについては壁面を拡幅したり縮小したりと大工工事を行うことで変更可能なので、リノベーションをお考えの方は要確認です!
<Check>
浴室サイズについて
間取り図の浴室部分にある「1212」や「1616」という数字は、お風呂の中の壁面から壁面までの寸法を表しています。
例)1616⇒幅160cm×奥行160cm
ハーフユニットバス
在来工法とユニットバスのよいとこ取りをしたお風呂です。「ハーフユニットバス」という名前を耳にしたことがある方は少ないかもしれませんが、バスタブと床パネル・腰壁パネル等はユニットバス同様に予め工場で製造したものを組み立てて、メンテナンスのあまり必要のない壁上面と天井は在来工法と同じ手法で施工を行います。
利点としては、機能性・意匠性・メンテナンス性すべてにおいてパフォーマンス性が高い点です。デメリットとしては、工期がユニットバスと比べると少し増えてしまうのと、コストも多少上がってしまうので、お時間とご予算に余裕のある方は是非検討してみて下さい!
02| 各部位の素材選びのいろは
形状について
浴槽の形には種類があり、家族構成や入浴スタイルによって選ぶとよいでしょう。
<定番>
- ストレート浴槽…最もスタンダードな形状で、浴槽内が深く設計されているめ、お一人で入浴される方や肩まで深く浸りたい方に適しています。
- ワイド浴槽…浴槽内がワイドに広がっており、膨らんだ部分にゆとりが生まれるため、親子で入浴される方におすすめです。
- エスライン浴槽…浴槽内が体の構造に合わせてエス字の形に作られているため、少量のお湯で無理なく浸ることができ、節水できるので環境にも優しいです。
- アーチ浴槽…浴槽の縁がアーチ状になっており、美しい曲線を取り入れることで意匠性も向上し、なおかつ握りやすい形状になっているため、小さいお子さんや年配の方がいるご家庭でも安心して使えます。
<その他>
コーナー浴槽、ななめ浴槽、たまご浴槽などがあります。
<Check>
浴槽内の腰掛ベンチ(段差)を付けることも可能
段差のない「フラットタイプ」…足を伸ばして広々と入りたい方向き
段差のある「ベンチタイプ」…小さいお子さんがいる家庭や、半身浴をする方向き
素材について
浴槽には何種類かの素材があり、それぞれに特色があります。
- FRP…一番普及しているのがこちらの浴槽です。
一般的にFRPとは「繊維強化プラスチック」のことを指し、Fiber Reinforced Plastic (ファイバー・リーンフォースド・プラスチック)の略です。簡単に言えば、プラスチックをより強くしたもので、防水性・保温性・耐衝撃性も高く、軽量で比較的コストも安価なので、外部のバルコニーや屋上防水などにも使用されています。デメリットとしては、汚れやキズが他の素材に比べてつきやすい点と、ホーロー等の金属素材と比べると、耐久性が多少劣る点です。 - ホーロー…鋳物や鋼板の表面の仕上げにガラス質の釉薬を高温で焼き付けた素材です。表面は光沢があり色合いも美しく、肌触りも滑らかで高い耐久性があることがメリットといえます。最大の特徴は、保温性。一度入れたお湯も冷めにくく、給湯器が省エネルギーで済むのが特徴です。重厚感があり、高級志向の方におすすめです。デメリットとしては高重量なため、階上の浴室に設置する場合や、下地の状況によっては床構造躯体を補強する工事が必要になること。また、表面がガラス層になっているため、傷がついたまま放置しておくとそこから錆が発生してしまうこともあるので、きちんとした事前調査とお手入れを行うことが大切です。
- 人工大理石…合成樹脂を主成分として作られたもので、天然の大理石は一切入っていませんが、色柄などのバリエーションも豊富で温かみがある素材です。アクリル系とポリエステル系と2種類のタイプがあり、アクリル系は透明感があり耐候性や耐衝撃性に優れ、ポリエステル系はアクリル系より性能や風合いなどは若干劣りますが、低コストでより光沢・高級感が出せるのが特徴です。表面が滑らかで手触りもよく、耐水性・耐衝撃性・耐汚性に優れ、価格がリーズナブルでバリエーションも豊富なため、水廻りの仕上げでは代表的なもののひとつです。しかし、FRP浴槽と比べると値段が高くなってしまうのと、材質が硬いため穴あけ加工が難しく、追い焚き機能などを後から追加できない点などに注意が必要です。
- ステンレス…鉄にクロムやニッケル等を加えた合金のことで、普通の鉄と比べて傷やサビに強く、耐久性・耐熱性も優れ、ホーローよりも薄いため、軽量で施工性にも富んでいます。値段も手ごろでメンテナンスも楽なので、キッチンのシンクや水廻りに多く採用されています。裏面に保温材を巻くことで保温性能も高めることができますが、FRP浴槽と比較すると、多少水アカや傷が付きやすいのが難点です。ただし、最近では傷が目立たない表面加工がされたヘアライン仕上げや、質感や意匠性にもこだわったエンボス仕上げの製品も出ています。
- 木製…桧やヒバなどを使って造られた木製のもので、昔ながらの旅館や銭湯などに使用されています。木の持つ風合いや香りが魅力的で、保温性・耐熱性も優れています。日本人の一番身近にある素材なので心身的にも癒し効果があります。サイズや樹種によって価格帯は大きく変わりますが、お値段相応の良質な空間を演出してくれます。一番懸念される耐腐性ですが、特殊加工することで腐りにくく、メンテナンスのしやすいものも出ています。
床・壁について
浴室の雰囲気を左右するのが面積の一番多い床や壁面の配色。床や壁面のカラーをどうするかでイメージをがらっと変えることができます。
- 床…ユニットバスでは一般的に樹脂素材の床材が採用されています。抗菌性や保温性、メンテナンス性もよく、バリエーションも豊富でお掃除のしやすい点でも人気があります。シックでモダンな雰囲気にしたい方はタイル床を選ぶとよいでしょう。
- 壁面…樹脂パネルが一番耐久性や防汚性に優れており、コスパもよいです。他には、マグネット式の棚板やタオル掛けに対応したホーローパネルや、意匠性に富んだタイル貼り仕上げも人気です。ただし、タイルで仕上げたい場合、在来工法もしくはハーフユニットのみでしか対応できません。加えて、タイルの色味や種類によっては冷たく感じるので、実際に肌触りを確認し、なるべく暖かい色味のものを選定してください。木板で仕上げる方法もありますが、防水加工を施したり、湿気を溜めない特殊加工を行うなどの専門的な知識と技術を持った専門業者での工事が必要です。
シャワー・水栓器具について
お風呂に欠かせない設備といえば、シャワーと水栓。機能性ばかりに目がいきがちですが、どのようなものを選ぶかで印象も大きくかわってきます。
- 水栓…一般的な混合水栓の他に、壁出しの湯水が別になっている単水栓があります。海外風のおしゃれな水栓にしたい方は、後者を選ぶと一層おしゃれな雰囲気を作ってくれます。
- シャワーヘッド…従来の手に持って使うタイプや、天井にシャワー設備が仕込まれているオーバーヘッドシャワー等があり、女性にとっては憧れの仕様なのではないでしょうか。最近ではマイクロバブル粒子のシャワーヘッド製品も様々なメーカーが出しており、興味を持っている方も多くいることでしょう。
その一方で、昔に比べて水量の少ない節水型のシャワーが増え、男性の中には物足りなく感じる方もいるようです。もしも、お時間がありましたらお近くのショールームで実際に手に取って体験してみてください。
照明器具について
見落としがちなのが照明です。照明色や形状によって、浴室空間の演出性を大きく左右します。
- 照明器具の種類…昔ながらの壁付けタイプのブラケット照明も、最近では天井埋込タイプのダウンライトが標準的なスタイルになりつつあります。広々とした天井空間をつくることが可能で、空間を均一に照らしてくれます。パナソニックで不動の人気を誇るスリムタイプのライン照明であれば、すっきりとしてシャープな印象を作ってくれます。
- 照明色…明るく広々と感じられるのは昼白色ですが、オーソドックスなのは温かみのある電球色です。視覚的にも落ち着いた印象をうけ、空間を和らげてくれます。調色や調光のできる照明器具もあるので、シーンによって使い分けることが可能です。
出入り扉について
ほとんどのご家庭は折れ戸かと思いますが、実は開き戸や引戸にすることも可能です。開き戸の場合、折れ戸に比べて出入りしやすいですが、浴室内での事故の際に緊急時の開閉がしにくい点がデメリットです。引戸は扉の引き代スペースが必要になるため、洗面所に余裕が無いと難しいですが、ご年配の方にとっては楽に開閉が出来るのと、車いすでの利用も可能なため、バリアフリーをご検討の方は是非ご検討ください。
そのほか、樹脂製の扉のほかにガラス張りのものもあり、海外の様なホテルライクな生活を送りたい方はガラス張り一択です。ただし、ガラスの種類やサイズよって浴槽の明るさも変わってきますので、設計士の方としっかりとイメージの共有を行うことが大切です。
換気設備について
建築基準法で設置が義務づけられている換気設備ですが、浴室では空気の入れ替えを行う一般換気扇や洗濯物を乾かせる浴室乾燥機付き換気扇、その他にも冷風や温風が出せる冷暖房機能付きのものまであります。家族の多いご家庭にはやはり、浴室乾燥機が人気です。
動力によっても違いがあり、電気式のものとガス式のもの2種類の換気設備があります。ファーストコストは電気式の方が比較的安価ですが、ガス式の方がパワーがあります。必要となる設備工事や施工方法も異なるため、事前確認が必要になることもあります。